はじめに

Home世界の街 > 夜景エンジェルスの冒険

夜景エンジェルズの冒険

概要

本稿は2000年度の法政大学工学建築学科卒業論文「都市の夜景に関する研究 -高層ビルからの夜景の時間変化と視覚変化-」に関するドキュメントです。論文の著者はOさんとKさんです。OさんとKさんの奮闘努力は,今振り返ってみても,大変なものだったと思います。今後の卒業論文作成の参考になると思いますので,これから卒論に取り組む人にぜひ読んでもらいたいと思います。

キーワード

空間解析論/卒業論文/夜景

1. はじめに

1-1. 夜景エンジェルズ

僕(安藤)のゼミにやってきた卒論生のOさんとKさん(以下,夜景エンジェルズという)が,「高層ビルから見た夜景の分析をしてみたい」と言い出した。「高層ビルから見た夜景の何を分析するの?」と尋ねたら,「高いところでみた夜景と低いところでみた夜景とは感じが違う,その違いを調べてみたい」という返事だった。

こういうはっきりとした仮説を話してくれると,僕は嬉しくなる。多くの学生の話は,辛抱強く話を聞いても仮説が何なのかを理解できないことが多いからだ。本来,建築の計画系の論文は,自分自身が興味をもったことから,明確な目的(仮説)を見いだし,それと格闘するべきものだと思う。

「高度による夜景の性格の違い」について調べようというテーマは決まったんだけど,どうやって(どういう方法で)それを調査・検証するかはやっかいな問題だ。何事も,やりたいことがあってもそれを実現する方法が見つからなければ,やりたいことは夢で終わってしまう。問題は,「異なった高度による夜景」をどうやってサンプリングするかだ。

1-2. 超高層ビル

すぐに思いつくのは,超高層ビルの各階からの夜景を5階おきか10階おきぐらいに撮影することなんだけど,そんな撮影が可能な超高層ビルがどこにあるだろうか? 超高層ビルはたくさんあるとしても,自由に出入りが可能でどこからでも撮影ができる超高層ビルはまずないだろう。もちろん,研究上の必然性があり,大学として正式に写真撮影の許可をお願いすれば,たいていの場合は許してもらえるものと思う。しかし,それには,ほんとうにそうすることが重要だという確信を,まずは僕たち自身が持たなければいけない。自分に自信のないことを人様にお願いできるはずがないからだ。そのためには,予備実験が必要だ。

すなわち,研究の初期段階では,できる範囲のことから始めなければならない。この場合は,とりあえず「異なった階数における夜景」を都合良く撮影できるビルを探すしかない。

夜景エンジェルズは,超高層ビルを探し回ってくれたと思うんだけど,けっきょく,異なった階数から夜景が撮影できる都合のいいビルは見つからなかった(もっと探せば見つかっただろうか?)。

で,夜景エンジェルズは困ってしまった。

1-3. 夜景写真

話は変わるが,「異なった高度による夜景」がうまくサンプリングできるかどうかは別にして,夜景の分析(後述する空間評価アンケートと画像解析)をするためには,夜景を写真撮影する必要があった。

実は,夜景の写真撮影は難しい。夜景エンジェルズには,なんとかしてちゃんとした夜景の写真を撮ってもらわなければいけない。高度は固定で構わないから「とにかくちゃんとした夜景写真を撮影する」という,ここにも一つの予備実験があったわけだ。この予備実験に,夜景エンジェルズはがんばって取り組んでくれた。デジタルカメラを使っての撮影がかんばしくなかったり,ガラス面の反射が写り込んでしまう現象に悩まされたりといったことに直面しながらも,試行錯誤を繰り返し,クオリティの高い夜景写真を撮る技を身につけてくれた(よくやった! 夜景エンジェルズ)。

1-4. 画角

「とにかくちゃんとした夜景写真を撮影しよう」という予備実験の過程で,「おもしろい発見」があった。夜景エンジェルズは,超高層ビルの上階からの撮影を繰り返していたわけだけど,(1)夜景をどの時間に撮影するのか,(2)写真をどの角度で撮影するのか,という2点に悩んでいた。 (1)はさておき,(2)の話は,写真に写る空と街のバランスをどうするかという問題である。カメラを水平に固定すれば,写真の上部約1/2には,空が写ることになる。しかし,人間は水平な視線でしか夜景を見ないわけではない。むしろ,街を見下ろしてみるのが自然かもしれない。だとすれば,夜景の写真はどのような角度で撮影するべきか,というのは,確かに重要な問題である。そして,この問題に対する何らかの回答を見つけなければ,夜景のサンプリングはできない。

こういう問題への回答は理屈で考えても拉致があかない。人間が夜景をどの角度で見ているかという問題をまじめに考えても,正解はないからだ。この問題に対する回答があるとすれば,いろんな角度でいろいろ見ている,ということだろう。角度が決められないとすれば,いろんな角度で写真を撮影するしかない。

ところで,角度という尺度はわかりやすい尺度ではない。角度が何度というより,「写真に占める空の割合が何割」といった方がはるかにわかりやすい。というわけで,夜景エンジェルズは,図1に示したような空が1/2,1/3,1/4,1/6,…,0,といった数種類の夜景を撮影してきてくれた。

お台場(左から:画角0,画角1/3,画角1/2)

新宿(左から:画角0,画角1/3,画角1/2)

池袋(左から:画角0,画角1/3,画角1/2)

図1 撮影写真

 

「予備実験の過程でのおもしろい発見」というのは,この画角を変えた数枚の写真を連続して見ると,それが「異なった高度による夜景」の連続に見えるということだ。空が 0,1/6,1/4,1/3,1/2 というシークエンスを見ると,だんだんと多くの空が画面に展開し,登りのシースルーエレベーターから夜景を見ているかのような錯覚を感じる。

というわけで,「異なった高度による夜景のサンプリング問題」はこれで解決した。「画角が一つに決められないからいろんな角度で撮影する」という場当たり的なサンプリング方法に,「異なった高度による夜景を検証する」という意味が加わったわけである。

もちろん,ほんとうに画角の変化によって高度の変化のシミュレーションが可能かどうかは,早急に結論づけられることではない。しかし,そういう可能性が見えてきたのは一つの発見だ。小さな発見ではあるが,こういう発見があるから,研究はおもしろい!

1-5. 夜景の時間変化

さて,(2)写真をどの角度で撮影するのか,という問題はいちおうクリアできたが,もう一つの問題,(1)夜景をどの時間に撮影するのか,という問題にはどう対処するべきだろうか。この点についても,研究は新たな展開を見せた。夜景エンジェルズは,当初,「異なった高度」という点にこだわっていたが,実際に夜景を体験してみると,「時間変化」が夜景のあり方に大きな影響を与えているらしいことを,新たに認識した。

ということで,「時間変化」についても,論文の分析事項に含めよう,ということになった。すなわち,(1)夜景をどの時間に撮影するのか,という点についても,時間を定めるのではなく,いろんな時間で夜景を撮影して,その違いを探ってみよう,ということになった。

1-6. 仮説・目的

以上のような経過を経て,夜景エンジェルズの卒論には,以下の2つの仮説が見えてきた。

  1. 高度が異なれば,夜景の感じも異なる
  2. 時間が変われば,夜景の感じも異なる

この仮説を検証することは,高度あるいは時間の変化によって,そこに展開する夜景が「変化するか/しないか」ということだけではない。高度あるいは時間の変化によって夜景も変化するとるとすればどのように変化するのか,すなわち,高度や時間の変化は夜景にどのような影響を与えているのかを探ることが,夜景エンジェルズの卒論の目的となった。それは,都市中心部における夜景の空間的特質を探ろうということでもあった。

2. 夜景の写真撮影

2-1. お台場,新宿,池袋

夜景エンジェルズは,以下に出向き,夜景を観察し,そして,写真を撮った。

  1. 東京都新庁舎
  2. 恵比寿ガーデンプレイス
  3. 池袋サンシャイン60
  4. 東京タワー
  5. お台場のフジテレビ本社ビル
  6. 横浜ランドマークタワー
  7. 東京オペラシティ

もちろん,他にも夜景スポットは無数にあるが,無数のスポットを無数にサンプリングすることに意味は無い。「少ないサンプル」で普遍的な結論を導くことこそが,要領のいい研究だからである。

学生に「できるだけ少ないサンプルで」なんていうと,彼らは拍子抜けをすることがある。せっかく意気込んでいる時に,「手抜き」を薦めるとはどいういうこと?という拍子抜けである。しかし,別に僕は「手抜き」を薦めているわけではない。

ただ,論文においては,サンプル数よりも全体の論理が重要で,始めからサンプルが多くしようとすると,サンプルを集めるだけで息切れを起こしてしまったりする。サンプルを集めていたら,論文の締切になってしまった,というのでは困るのだ。

サンプリングにあたっては,何をサンプリングするかはもちろん重要ではあるが,どうやってサンプリングするかが重要である。また,サンプリングした資料をどうやって分析するかも重要だ。だから,論文においては,まずは少ない資料で構わないから,資料を適切にサンプリングし,予備分析を行っていく必要がある。

だいたい,サンプルが多くなると,サンプリングがどういう論理に基づくものなのかが曖昧になることが多い。まずは少ないサンプルでしっかりとした論理を組み立てて,必要ならば,後からサンプルを増やすようにするべきだ。サンプルを増やしたいなら,まずは論理を確立して,後から追調査をすればいい。

いろいろな夜景スポットを探し回っていた夜景エンジェルズだったが,思い切って,分析対象場所を絞ってもらうことにした。というのは,夜景エンジェルズの研究では,画角変化と時間変化という2つのパラメーターが存在する。1カ所の夜景につき,数枚の画角変化夜景と数枚の時間変化夜景をサンプリングしていくことになるわけで,分析対象場所がたくさんになると,サンプリングする写真の数は膨大になってしまう。

ということで,夜景エンジェルズには,分析対象場所を以下の3カ所に絞ってもらった。

  1. お台場:フジテレビ本社ビルからの夜景
  2. 新宿:東京都庁からの夜景
  3. 池袋:サンシャイン60からの夜景

2-2. 空が「0」,「1/3」,「1/2」

夜景エンジェルズは,お台場,新宿,池袋の3カ所について,画角を変えた写真を撮影した。結果としては,空が「0」,「1/3」,「1/2」という3つのバリエーションを撮影することになった。とはいっても,この3つのバリエーションに至る予備実験段階には,「1/6」とか「1/4」とかといったいろいろなバリエーションが試されていた。「できるだけ少ないバリエーションで」というのが研究の戦略だから,3つのバリエーションというのは妥当だ。

2-3. 昼景,夕景,夜景

さらに夜景エンジェルズは,お台場,新宿,池袋の3カ所の,3つのバリエーションの画角について,撮影時間を変えた5枚の写真を撮影した。「撮影時間を変えた5枚」というのは,「昼,夕,夜の3枚に,昼と夕の中間,夕と夜の中間,を加えた5枚」である。

さて,ここで,僕と夜景エンジェルズの間には,いささかの意見の対立があった。そしてその結果として,時間変化のバリエーションは3ないし5種類ということになった。そのいささかの意見の対立とは,以下のようなことだった。

僕は,夜景エンジェルズに,「5枚もあると分析が難しくなるから,昼,夕,夜の3枚でいいんじゃないの?」ということを言った。僕は,夜景エンジェルズのそもそもの発想は,「高度(いつの間にか高度は画角におきかわったが)の違い」にあったわけだから,サンプリングをより詳細にするなら,時間変化のバリエーションよりも,画角変化のバリエーションを増やしたらいいように思った。しかし,夜景エンジェルズは,画角変化のバリエーションをあっさりと3つの絞る一方で,時間のバリエーションについては,5つをサンプリングすることを主張した。夜景エンジェルズ自身の興味の重点も,この頃には,画角変化から時間変化に移っていたのだろう。

強く主張されるとむげに否定はできないのだが,後で述べる「空間評価アンケート」のことを考えると,分析に使用する写真は減らしておきたかった。喧嘩(じゃなくて議論)の末,お台場,新宿については時間変化のバリエーションを「昼・夕・夜」の3つに減らし,池袋についてのみ「昼・昼夕中間・夕・夕夜中間・夜」の5つのバリエーションを採用することになった。

2-4. 3×3+3×3+3×5=33

以上のようなわけで,以下の夜景写真が,分析対象としてサンプリングされた。これが,夜景エンジェルズの分析対象である。

  • お台場
    • 昼景:空なし,空1/3,空1/2
    • 夕景:空なし,空1/3,空1/2
    • 夜景:空なし,空1/3,空1/2
  • 新宿
    • 昼景:空なし,空1/3,空1/2
    • 夕景:空なし,空1/3,空1/2
    • 夜景:空なし,空1/3,空1/2
  • 池袋:サンシャイン60からの夜景
    • 昼景:空なし,空1/3,空1/2
    • 昼夕(中間)景:空なし,空1/3,空1/2
    • 夕景:空なし,空1/3,空1/2
    • 夕夜(中間)景:空なし,空1/3,空1/2
    • 夜景:空なし,空1/3,空1/2

2-5. ファイル名

さて,老婆心ながら,学生にはぜひ意識してもらいたいことがある。それは,ファイル名の付け方に関することだ。研究のデータをコンピュータで扱うときは,ファイル名の付け方を注意深く工夫して欲しい。

研究データのファイル名に「DOCU0001.JPG~DOCU0033.JPG」なんていう意味のない連番を使うのはいただけない。写真をスキャンニングしたり,デジカメで撮影した写真には自動的に連番のファイル名が付いたりするが,こういった単なる連番のファイル名では,そのファイルの中身が何なのかがわからない。たとえば,「DOCU0022.JPG」がお台場なのか池袋なのか,その時間が昼なのか夜なのか,その画角が 0 なのか 1/3 なのか,直感的に判別できない。このファイル名を,たとえば,以下のような記号を使って,「01odbA13.JPG」という風に表せば,ファイルの名前と中身が結びつく。

  1. 「01」(最初の2文字):連番
  2. 「odb」(次の3文字):odb=お台場,sjk=新宿,ikb=池袋
  3. 「A」(次の1文字):A=昼景(Afternoon),E=夕景(Evening),N=夜景(Night)
  4. 「13」(最後の2文字):00=「空なし」,13=「空が1/3」,12=「空が1/2」

3. 夜景の空間評価

3-1. 空間解析論

空間の研究には,空間の特徴の分析(いわゆる空間評価分析とか心理量分析)と形態の分析(いわゆる定量化分析とか物理量分析)があることになっている。その空間の性格と形態との関係を問題にするのが「空間解析論」で,それが僕の専門ということになっている。空間と形態の間には,やはり何らかの関係があるだろうと思えるわけで,だとしたらその関係って何?っていうことを考えたくなるわけだ。

夜景の形態的特徴を分析する形態分析については後述するとして,まずは,空間の性格,すなわち,心理的な特性を調べてみよう。

3-2. SD法による空間評価アンケート

夜景に限らず,空間の心理的な特性を調べるために有効な方法の一つは,SD法による空間評価アンケートを行うことである。

SD法とは,Semantic Differencial Method の略。日本語に訳すと,「意味的差異の検出法」とでもいうことになる。この方法は,1957年ごろに,Osgood ら[1] によって提案された(注1)。

SD法は,多数の形容詞対(形容詞のペア)を用いて、アンケートにより事物を言語化する手法である。具体的には,たとえば… 快適な空間 活気のある空間 乱雑な空間 暗い空間 近代的な空間 …… といった形容詞対を用いて,アンケートを取ろうということである。

そして,たとえば,「快適な」という形容詞について, 非常に快適な かなり快適な やや快適な 快適でも不快でもない やや不快な かなり不快な 非常に不快な という7つレベルを設定し,いずれかのレベルにチェックをしてもらえば,快適さのレベルが数値化できることになる。

という方法で,それぞれの形容詞対による空間の評価レベルが数値化できるが,空間評価分析においてSD法が有効なのは,単一の形容詞対による評価レベルが数値化できること自体にあるのではない。むしろ,SD法のおもしろさは,形容詞対による評価レベルが数値化を通して,形容詞対どうしにどのような類似性があるのかを探ることにある。空間が乱雑であることと,明るいことの間には相関があるのかないのか,といったようなことを調べることによって,空間の評価構造が見えてきたりする。

すなわち,多数の形容詞対を用いるSD法アンケートの結果を統計的に処理することによって、多様な現象を説明する主要な評価因子を算出することができるのだ。夜景エンジェルズの夜景の分析にも,この方法が用いられている。

3-3. アンケートの概要

夜景エンジェルズは,33枚の夜景写真に対して,以下の21の形容詞対を用いたSD法7段階評価アンケートを行った。

  1. 規則的な-不規則的な
  2. 複雑な-単純な
  3. 開放的な-閉鎖的な
  4. 寒々しい-暖かい
  5. 人工的な-自然な
  6. 親しみのあるー親しみのない
  7. 繊細な-大胆な
  8. 密な-素な
  9. 統一感のあるー多様な
  10. 特徴のあるー特徴のない
  11. 静的な-動的な
  12. 多彩な-無彩色な
  13. 明るい-暗い
  14. 奥行きがあるー奥行きがない
  15. 連続な-不連続な
  16. 平面的な-立体的な
  17. 賑やかな-寂しい
  18. 安心な-不安な
  19. 殺風景な-趣のある
  20. 退廃的な-健全な
  21. 都会的な-田舎的な

このアンケートに答えてくれた被験者は,30名だった。30名が多いか少ないかは簡単には判断できない問題である。詳しい議論は機会を改めたいのだが,統計の結果を見ると,被験者がアンケートに協力的な場合は,かなり少ない人数でもデータは安定する(信頼できる)ということがいえる。しかし,逆に,被験者全員が必ずしもアンケートに協力的でない場合は,被験者の人数を少ないとデータの信頼性に疑問が残ることが多い。早い話,一つのでたらめな回答をうち消すためにたくさんの真面目な回答が必要になってしまうのだ。

夜景エンジェルズのアンケートに協力してくれた人は,建築学科の学生・大学院生たちである。つまり,夜景エンジェルズの友人たちであったわけだが,彼らにとって,卒論は他人事ではない。建築学科の学生・大学院生は,一般の人たちに比較して,写真から空間をイメージする訓練を積んでいるということもあるが,何よりもアンケートに真剣に取り組んでくれるという点で,優秀な被験者であるといえる。30名という被験者の数は,統計のばらつきを見ても,まあまあ十分な数だったといえる。

3-4. 空間評価プロフィール:画角変化・時間変化がもたらす空間評価の差異(その1)

図2は,画角別の空間評価プロフィールである。形容詞対は,画角による評価の変化が大きいものが横軸の右側にくるように並びかえてある。

図2 プロファイル(画角別)

 

ここで,評価プロフィールというのは,各評価の平均値である。たとえば,画角0の「閉鎖的-開放的」の平均値は0.05であるが,これは,全33枚の写真中の画角が0の写真11枚の平均値が0.05であったということである。このように平均値を比較することで,画角の違いによる空間評価の差異を数値的に把握しようとしたものが,評価プロフィールである。

図3は,時間別の空間評価プロフィールである。形容詞は,時間による評価の変化が大きいものが横軸の右側にくるように並びかえてある。 画角による評価プロフィールの変化を見ると,画角が0~1/2に変化することによって「奥行き感,開放感」が増加している。しかし全体的には,類似したプロフィールとなっている。

図3 プロファイル(時間別)

 

時間の変化による景観の評価構造では,評価プロフィールのずれが大きく,景観の評価にかなりの差異があることが認められる。

3-5. 相関分析:画角変化・時間変化がもたらす空間評価の差異(その2)

表1は,画角の変化がもたらす空間評価の差異を相関係数によって表したものである。

表1 画角変化による空間評価の差異

 

画角別の各空間評価の相関には,部分的には0.61(池袋夕景,画角0と画角1/2),0.64(お台場夕景,画角0と画角1/3)といった比較的低い相関が見られはするものの,全体的には相関関係は高くなっている。池袋,お台場における画角による評価の差異は,足下に建つ低層の特徴的な建物が見え隠れすることに起因するものと考えられるが,足下の低層の建物の影響が希薄になる一定の高度に達すると,高度による景観評価の差異はほとんど見られなくなる。

表2は,時間の変化がもたらす空間評価の差異を相関係数によって表したものである。

表2 時間変化による空間評価の差異

 

時間の変化による景観の評価構造には,全体に相関関係が低くなっおり,景観の評価にかなりの差異があることが認められる。

3-6. 夜景の空間評価構造

画角と時間による空間評価の差異について検証すると,以下のことがわかった。 評価プロフィールのズレは,画角よりも時間によって生じる。 画角が変化しても,評価間の相関は高い。一方,時間が変化すると,評価間には差異が生じる(相関が低くなる)。

ようするに,時間の変化によって景観の評価(印象)が異なることがわかった(確かめられた)わけである。ということは,昼から夜へと時間が経過することによって形成される「夜景」という景観は,昼景,夕景とは異なった独自の景観であることがわかった(確かめられた)ということになる。

このことは,一見当たり前のことであるようにも思われるであろうが,この後の分析に対する大きなポイントとなる。

一方,画角による景観の評価には,大きな差異が認められなかった。もちろん,詳細に見れば,それなりの差異はあった。しかし,その差異は,足下に存在する特徴的な建物の見え隠れによって生じるものだと考えられる。

という考えの妥当性について,今後もっと徹底的に追及する必要があるかもしれないが,とりあえず時間と画角の比較において,画角よりも時間が空間評価の差異に大きく影響していることは明らかになった。

画角の違いが高度の違いをシミュレーションしていると考えると,高度が違っても,景観の評価はそれほど大きくは変わらないということになる。夜景エンジェルズの当初の「高度が変わると夜景(景観)の印象も変化する」という仮説は,否定されたことになる。とはいっても,ここまでの分析を通じて実証されたことは,「高度が変わっても夜景(景観)の印象は変化しない」ということでは決してない。あくまでも,「高度と時間を比較した場合,景観の印象変化により大きな影響を与えるのは,画角ではなく時間である」ということだ。

3-7. 因子分析

21の評価形容詞を縮約するために因子分析を行うと,表3に示した因子負荷表が得られた(主因子法・バリマックス回転)。

表3 因子分析

第1因子は,「閉鎖的,人工的,退廃的,立体的,都会的」といった都会らしさを表す因子であるので「都会性」と名付けることにした。

第2因子は,「賑やかで,多彩で,動的で,趣があり,明るく,暖かい」といった賑やかで華やいだ雰囲気を示す因子であるので,「繁華性」と名付けることにした。

第3因子は,「特徴的で,単純で,大胆」といった形態的な感覚を示す因子であるので,「象徴性」と名付けることにした。

第4因子は,「多様で,不規則な」な状況を示す因子であるので,「多様性」と名付けることにした。

3-8. 因子分析とは何か?

ここで,因子分析について,補足をしておこう。

景観の空間評価の特徴を説明するのに,今,データとしては,21の形容詞=説明要因がある。しかし,説明要因が21もあっては,空間評価の特徴が端的に説明できない。より少ないまとまった観点から空間評価の特徴を説明できるに越したことはない。そこで,因子分析が登場する。

因子分析というのは,21の形容詞が意味する主要な評価軸(景観がどのような観点で評価されているのかを表す評価基準)を見つけるための分析である。

たとえば高校生の成績が,21の教科によってデータ化されているとしよう。高校に21もの教科があるかどうかよく知らないが,数学,現代国語,物理,地理,化学,古文,音楽,技術家庭,生物,漢文,体育,日本史,世界史,道徳,…,って数えていくと21くらいはありそうである。

で,ある高校生の成績を説明する時に,21の教科の成績を羅列するのではなく,この人は, 理科系も文化系も体育系も音楽系もすべてに優れたスーパーマンだ 理科系の成績はいいけれど,その他の成績はよくないので,理科系オンリー派だ 理科系も文化系も成績は芳しくないけど,体育系だけは抜群だから,体育会オンリー派だ 体育系と理科系の成績がいいので,体育会IT派だ … とかっていう風に,「~~系」という言葉を使うとわかりやすいわけである。この「~~系」にあたる説明軸=説明因子のまとまり,を統計処理により見つけるのが因子分析である。

空間評価の話に戻ると,画角と時間が異なった景観の空間評価は,「都会性,繁華性,象徴性,多様性」の4つの評価軸によって説明できる,というのが,因子分析の結論だ。ここで,「都会性,繁華性,象徴性,多様性」という評価軸の意味は何なのか,っていうことを表しているのが,上に示した因子負荷表ということになる(わかりましたか?)。

3-9. 画角および時間による因子得点の変化

表4は,画角の変化に伴う4つの評価因子の因子得点の推移を示したものである。また,表5は,時間の変化に伴う4つの評価因子の因子得点の推移を示したものである。

表4 画角変化と因子得点

 

表5 時間変化と因子得点

 

因子得点というのは,各景観の「都会性,繁華性,象徴性,多様性」の度合いである。

お台場の昼景では「都会性」の因子得点がマイナスの値をとっている。これは,お台場の昼景は,「都会性」に係わる形容詞の評価データが,総合的に「非都会性」に向いていることを示している。

先の高校教科の成績の話でいえば,理科系,文化系,体育系といった因子の度合いということになる。因子得点は,統計的に計算されるもので,たとえば,理科系という因子に大きく影響する科目が数学と物理,ほとんど影響しない因子が漢文と古文であったとすると,理科系の因子得点は,ほぼ数学・物理によって規程される数字であり,漢文・古文によっては規程されない数字であることになる。

表4と表5の両者の値の場所ごとの差異に注目すると,以下の傾向が認められる。

  1. 「都会性」は,「お台場」,「池袋」ではマイナスの,「新宿」ではプラスの値をもっている。すなわち,「都会性」は,各場所ごとに異なる場所的特性の一つと考えられる。
  2. 「象徴性」は,「お台場」では大きくプラス,「新宿」ではゼロ付近,「池袋」では大きくマイナスの値をもっている。すなわち,「象徴性」は,各場所ごとに異なる場所的特性の一つと考えられる。
  3. 「繁華性」,「多様性」には,場所の違いによる一般的差異は認められない。

表4(画角による因子得点の変化)を見ると,以下の傾向が認められる。

  1. 「都会性」は,画角が下向きから水平に近づくにしたがって,やや小さくなる。すなわち,「都会性」は,空ではなく地表の構成に関わる因子であると考えられる。
  2. 「繁華性」は,画角が下向きから水平に近づくにしたがって,やや小さくなる。 すなわち,「繁華性」は,空ではなく地表の構成に関わる因子であると考えられる。
  3. 「象徴性」は,「お台場」,「新宿」では画角が変わってもほとんど変化しないが,「池袋」では小さくなる傾向がある。すなわち,「象徴性」は,各場所ごとの場所的特性の一つと考えられる。
  4. 「多様性」は,画角の変化に対して不規則な挙動を示していおり,画角変化による一般的傾向は認められない。

表5(時間による因子得点の変化)を見ると,以下の傾向が認められる。

  1. 「都会性」は,「お台場」,「新宿」,「池袋」のそれぞれの場所において,値のプラス・マイナスと時間変化に伴う増減の傾向が異なっている。すなわち,「都会性」は,各場所ごとに異なる場所的特性の一つと考えられる。
  2. 「繁華性」は,昼景から夜景への時間変化に伴い,値がはっきりと増加する因子である。すなわち,「繁華性」は時間変化と関係が深く,夜景に特徴的な因子となっていると考えられる。
  3. 「多様性」は,時間の変化に対して不規則な挙動を示していおり,時間変化による一般的傾向は認められない。

以上を総合すると,「都会性」および「象徴性」は,各場所ごとに異なる場所的特性であること,「繁華性」は時間変化と関係が深い,夜景に特徴的な因子であることがわかったといえる。

夜景の解析

4-1. 建築学会大会で発表

以上が,夜景エンジェルズの卒業論文のダイジェストである。「1. はじめに」と「2. 夜景の写真撮影」はおもしろく読んでもらえるのではないかと思うのだが,「3. 夜景の空間評価」については固い文章になってしまっており,すんなりとは読みにくいのではないかと思う。これは,「3. 夜景の空間評価」は,ほぼ論文そのままの文体で書いてしまっているからである。しかも,その文体は,夜景エンジェルズのものというよりは,僕の文体になってしまっている。

夜景エンジェルズは2001年3月に建築学科を卒業し社会人になった。その後,僕は,当時大学院修士2年生だったKくんと一緒に,夜景エンジェルズの卒論を発展させ,2001年9月に開催された建築学会大会で以下の2つの発表をしている。

  1. 安藤直見・金成鎮・大塚弘子・小林響子,高層ビルから見た都市中心部の夜景に関する研究(その1) ―画角変化と時間変化による空間評価の差異,F-1分冊,pp.907-908
  2. 金成鎮・安藤直見・大塚弘子・小林響子,高層ビルから見た都市中心部の夜景に関する研究(その2) ―夜景の画像特性,F-1分冊,pp.909-910

上記の発表1) が,夜景エンジェルズの卒論の中心部分であり,発表2) は,卒論ではまとめきれなかった点に追検証を行い,ブラッシュアップした部分である。

ここで,建築学会大会での発表における上記1.の原稿は,僕が,夜景エンジェルズの卒論をベースに,データを再検証し,僕の文体で作成したものである。「3. 夜景の空間評価」が論文調なのは,その発表原稿の文体が残ってしまっているからだ。もっと読みやすい文体に改めるべきかとは思うが,それはそれで面倒なので,論文調のままになっている。「3. 夜景の空間評価」を書き直すかどうかは今後の課題としたい。

4-2. 画像特性の解析

さて,空間と形態との関係を探ることが空間解析であることはすでに述べた。空間評価アンケートによって空間の性格が言語化された次にステップとして空間解析がやるべきことは,空間の性格に影響を与えている形態の特徴を見いだすことだ。夜景には夜景のさまざまな形態的特徴があるはずだが,いったいどういった特徴が夜景を演出しているのか,それを探ってみたいと思う。

繰り返して「形態」という言葉を使っているが,夜景エンジェルズが注目したのは,夜景を構成する建物の高さとか窓の数とか電灯の配置間隔といった形態ではない。そういった形態的特徴が夜景の空間性に大きな影響を与えていると考えられるのなら,それらを計量することも試みるべきではあろうが,それはそれでまた別の研究だ。

僕たちが注目したのは,評価アンケートに使った写真そのもの物理的情報である。写真には,全体の明るさ,明るいと暗さのメリハリ,明るい部分のちらばり具合,色彩のカラフル度,といったような様々な画像的特徴がある。そういった画像的特徴と空間評価構造との間の関係を探りたかった。

またまた論文調になってしまうが,建築学会大会の発表2) の概要を以下に示すこととする。

4-3. 画像特性の概要

画像の物理的な構成の特徴を探れば,画像に投影された空間の性質を把握するができる。そこで,夜景の「明度,輪郭,色彩」に関する3つの基本的性質を表す画像特性を提示することを試みた。

提示する画像特性の有効性を把握するため,随時,空間評価形容詞あるいは空間評価因子との相関を検証する。

空間評価アンケートでは,スキャナを用いて画像化した夜景写真を,1024×768ピクセルの大きさのコンピュータ・ディスプレイ上で提示することによって行った。解析に用いる画像は,空間評価アンケートで用いた画像を360×240ピクセルの大きさに縮小したものを用いた。 画像を構成する360×240=86400個の画素の「赤,緑,青の各色の明るさを示すRGB値」を読みとり,画素の集合が形成する画像特性を算出する画像解析プログラムを作成した。

ここで,総画素数=画像の大きさは,360×240=86400ピクセルとした。各画素の赤,緑,青の各色の明るさを示すRGB値は,R, G, B(赤,緑,青)のそれぞれにつき,0~255(8ビット)とした。

4-4. 明るさに関する画像特性(輝度特性)

明るさに関わる画像特性としては,以下のような特性が考えられる。

  1. 輝度平均:画像全体の明るさの平均(各画素の輝度は,0.30R+0.59G+0.11Bで算出される,0~255)
  2. 低輝度画素数:低輝度部分(全体輝度平均を下回る部分)の大きさ
  3. 高輝度画素数:高輝度部分(全体輝度平均を上回る部分)の大きさ
  4. 低輝度平均:低輝度部分(全体輝度平均を下回る部分)の明るさの平均
  5. 高輝度平均:高輝度部分(全体輝度平均を上回る部分)の明るさの平均
  6. 輝度比:明暗のメリハリ:高輝度平均)/(低輝度平均)
  7. 輝度標準偏差:画像全体の明暗のバラツキ

4-5. 色彩に関する画像特性(色彩特性)

RGB値のいずれかが224~255の値をもつ色合いの明瞭な部分を明瞭域と定義した時,色彩に関する画像特性として,以下のような特性が考えられる。

  1. 明領域画素数:色合いの明瞭な部分の大きさ
  2. 明領域数:色合いの明瞭な部分の領域数
  3. 明領域輝度平均:色合いの明瞭な部分の明るさ(低いほど原色に,高いほど白に近い)
  4. 明領域画素平均:明領域の平均的な大きさ
  5. 明領域画素偏差:明領域の大きさのバラツキ
  6. エントロピー:明領域の大きさのエントロピー
  7. 1次モーメント(X):明領域の水平方向の対象性
  8. 1次モーメント(Y):明領域の垂直方向の対象性
  9. 2次モーメント(X):明領域の水平方向の広がり
  10. 2次モーメント(Y):明領域の垂直方向の広がり

また,横360×縦240ピクセルの画像を横15×縦10のメッシュ(一つのメッシュの大きさは横24×縦24ピクセル)に分割したとき,隣接するメッシュ間の色の差分である色差を算出することにより,画像全体の色の分散性を計ることができると考えられる。

  1. 平均色差:隣接メッシュ間の色の差異,あるいは,隣接メッシュとの色差=
√{(r1-r2)^2+(g1-g2)^2+(b1-b2)^2}

4-6. 輪郭に関する画像特性(輪郭特性)

画像の形態的明瞭度を表す輪郭に関する画像特性としては,以下のような特性が考えられる。

  1. Roberts:ロバーツ法(1次微分)による輪郭抽出
  2. Laplacian:ラプラシアン法(2次微分)による輪郭抽出
  3. Prewitt:プレヴィット法(テンプレート・マッチング)による輪郭抽出

4-7. 夜景の画像特性

21種類の画像特性のうち,夜景の空間特性に関係すると考えられる特性は,「輝度平均,輝度比,明瞭域面積,明瞭域数,輪郭率」の5つであった。その解析結果を表6に示した。他の16種類の特性については,夜景の空間特性との関係が認められなかった。

表6 夜景の画像特性

「輝度平均,輝度比,明瞭域面積,輪郭率」の4つの特性については,先に得られた空間評価因子のうち,夜景に特徴的な空間評価因子であることを指摘した「繁華性」,および,お台場,新宿,池袋の各都市の場所的特徴に関わる「象徴性」との間に一定の相関が見られた(以下の文中に相関係数を示すが,その値は,空の影響がない「画角=0」の画像における値である)。

画像全体の明るさを表す「輝度平均」は,昼景から夜景への時間変化に伴って,低くなる。この「輝度平均」は,「繁華性」(空間の賑わいを表す因子)と-0.90の強い相関をもっていた。当然のことであるが,夜景は,昼景あるいは夕景に比べて,暗いという特性をもっているといえる。

画像の明るさのめりはりを表す「輝度比」は,空の影響がない「画角=0」の画像において,昼景から夜景への時間変化に伴って,大きくなる。この「輝度比」は「繁華性」と0.60の相関をもっていた。すなわち,夜景は,明るさのめりはりがはっきりした空間であるといえる。

色合いの明瞭な部分の大きさを表す「明瞭域面積」は,空の影響がない「画角=0」の画像において,昼景から夜景への時間変化に伴って,小さくなる傾向が見られる。しかし,夕景においていったん小さくなった「明瞭域面積」が,夜景において再び大きくなる傾向も見られる。すなわち,夜景は,夕景に比較して,色合いの明瞭な部分が大きくなっている。この「明瞭域面積」は,場所的特徴に関わる「象徴性」と0.69の相関をもっており,「象徴性」と色合いとの間には何らかの関係性があることが認められた。 色合いの明瞭な領域の数を表す「明瞭域数」も,「明瞭域面積」と同様に,空の影響がない「画角=0」の画像において,昼景から夜景への時間変化に伴って,夕景においていったん少なくなった後に,夜景において再び少なくなる傾向も認められる。すなわち,夜景は,夕景に比較して,色合いの明瞭な領域の数が多くなっている。

画像構成の複雑さを表す「輪郭率」は,昼景から夜景への時間変化に伴って,大きくなる。すなわち,夜景は,輪郭が複雑になっている。この「輪郭率」は,「繁華性」とかなりの相関(0.74)をもっていた。表に示した「輪郭率」は,「ロバーツ法(1次微分)による輪郭抽出」の値であるが,「ラプラシアン法(2次微分),プレヴィット法(テンプレート・マッチング)」による輪郭率にも同様の傾向が見られる。画像構成の複雑さは,夜景の特性の一つと考えられる。

まとめ

高層ビルから眺めた景観の空間評価において,画角(高度)と時間の変化による空間評価の差異を比較すると,高度よりも時間の変化が大きく影響していることがわかった。その時間の変化によって生成される夜景は,都市中心部の特徴的な景観となっているといえる。

高層ビルから眺めた景観の空間評価には,「都会性,繁華性,象徴性,多様性」という4つの評価軸が存在することがわかった。そして,このうちの「繁華性」は時間変化と関係が深い,夜景に特徴的な因子であることがわかった。

夜景に特徴的な空間評価因子である「繁華性」と相関の高い画像特性,すなわち夜景に特徴的な物理的特徴として,明るさに関わる「輝度平均,輝度比」,色彩に関わる「明瞭域面積,明瞭域数」,輪郭に関わる「輪郭率」を提示した。これらの画像特性は,RGBの色情報をもった画素の集合である画像を解析することによって算出された特性であり,画像情報と空間の特性との間に認められる関係性について検証を行うことにより,夜景の空間構成の特質の一端を明らかにした。

おわりに

今さらですが,夜景の研究に取り組んでくれた夜景エンジェルズの2人には,ほんとうに敬意を表します。あれからもう12年が経ったのかと思うと,大変に懐かしいです。今から思うと,あの頃の僕は,今よりもずっと真剣に学生の卒業論文と向かい合っていたように思います。 (2012年秋筆)

  1. SD法に関する文献は多数ある。
  2. SD法アンケートにおける形容詞対は,もし可能ならば、この世に存在するすべての形容詞を用いたアンケートをすればよいかもしれないが,それはまったく不可能なので,有限個の形容詞対を提示することになる。分析の目的,被験者の質と量,アンケートの形式などの違いによって,形容詞の数,種類を決めることになる。一般には,ヒアリングや予備アンケートを行い,分析に適した数十種類程度の形容詞を抽出する。

参考文献

  1. Osgood, C.E. et al., 1957, The Measurement of meaning (Illinois Univ. Press)
  2. SD法によるイメージの測定 -その理解と実施の手引-(岩下豊彦著、川島書店、1983年)