はじめに

Homeデザイン > Gimp(画像処理)

Gimp(画像処理)

はじめに

建築(または立体)を図面に表現する方法として一般的なのは,平面図,断面図などの切断図や,立面図は建築を真正面から見る平行投象図です。立体図としては,アイソメトリックやアクソノメトリックなどの立体を斜めに見る平行投象図や,立体を任意の視点から任意の視野で眺める透視投象図(透視図)などもあります。

コンピュータを用いた表現であるCG(Computer Graphics)としては,建築(または立体)は画像として出力されます(JPEG形式の画像がよく使われます)。ここでは,画像を操作する画像処理について学びましょう。

ここでは,画像処理を学ぶために,「GIMP」というフリーウェアを使用します。Gimpは「ギンプ」とか「ジンプ」とか読まれます。市販されている画像処理ソフトとしては「Photoshop」が有名ですが,GimpはPhotoshopに匹敵する高機能ソフトです。

Gimpは,以下の公式サイト他からダウンロードしてインストールできます。

GIMP - The GNU Image Manipulation Program
http://www.gimp.org/

 

写真照合(Sketch Up)

Gimpを用いた画像処理を学ぶ前に,Sketch Up 上で,建築と背景を合成する画像処理を試してみましょう(図1)。

図1 背景との合成(ファンズワース邸)

 

まずは,「背景の前面に合成したい建築」のファイルを,Sketch Up で読み込みます(作成します)。

メニュー[カメラ]>[新規写真照合…]から背景となる写真を読み込みと,[写真照合]モードになります(図2)。

図2 [写真照合]モード(この図ではモデルをオフにしている)

 

[写真照合]モードでは,赤(X軸),緑(Y軸),青(Z軸)と,それぞれの軸方向の消点が表れます(図3)。

図3 写真照合

 

黄色□で原点を配置し,赤□と緑□を端点とする計4本の線分を使って,写真の消点と建築(モデル)の消点を合わせます。


うまく照合できたら,メニュー[ファイル]>[エクスポート]>[2Dグラフィック...]で画像を書き出します。ここで注意して欲しいことは,書き出された画像はもはや3次元の立体ではなく,2次元の絵(画像)であるということです。これから学ぶことは3次元の操作ではなく,2次元の画像処理です。

後ほど,同じことを,Gimpを用いてやってみます。図1は,建物の影が地面に落ちていないので,合成したことがバレてしまうます。Gimpで合成する際には,建物に影をつけることにします。

とりあえず,Sketch Up は終わりにしましょう。

Gimpの起動

まずは,Gimpを起動してみましょう。起動時の画面構成の例を下図に示します(図4)。

下図画面の左にあるのが「ツールボックス」,中央が「画像ウィンドウ」,右が「ダイアログウィンドウ」です。

図4 Gimpの初期画面

画像を開く

画像ウィンドウのメニュー[ファイル]>[開く]から,先に保存した「写真照合」のファイルを開いてみてください。

次に,配布したファイル「Chartles_Near.jpg」を開いてください(図5)。

図5 シャルトル大聖堂

 

横向きになってしまっている写真を縦向きに直しましょう。メニュー[画像]>[変換]>[反時計回りに90度回転]を指示してください。そして,メニュー[表示]>[ウィンドウサイズを合わせる]を選び,画像をウィンドウにフィットさせてください。

メニューは[画像ウィンドウ]の左上の[右三角]ボタンからもアクセスできます。また,[画像ウィンドウ]の右上には[ウィンドウサイズ変更時に画像を[ズーム]ボタンがあります。[画像ウィンドウ]の左下には,画像をズーム(拡大・縮小表示)する選択ボタンがあります。画像は,メニュー[表示]>[表示倍率]からもズームできます。また,ツールボックスにも[ズー]」アイコンがあります。

さて,この画像は,フランスに建つ「シャルトル大聖堂」の写真です。「シャルトル大聖堂」は,中世後期の建築様式であるゴシック建築の傑作で,世界遺産にも指定されています。この写真は僕(安藤)が撮影した写真です。この写真は,建築写真としてはシロウト丸出しのダメダメな写真です。皆さんはこんな下手な写真を撮らないようにしてください。というか,どんな写真だって撮るのは自由ですが,下手な写真を平気で人に見せるのは恥ずかしいという自覚を持ちましょう。この写真が恥ずかしい第1の理由は,建物の構図が3消点パースになってしまっていることです。

別の例を見てみましょう(図6)。

図6 フィレンツェ・シニョーリア広場

 

この写真は,イタリア・フィレンツェのシニョーリア広場に建つ「ヴェッキオ宮殿」です。左右に2つの写真がありますが,どちらの写真が建築写真らしいと思いますか? 答えは自明ですよね。パースの構図が2消点になっている左の方がより自然な建築写真で,右はダメ写真です。でも実は,左の写真は右の写真を加工してつくった写真です(どのように加工したかは後で解説します)。

建築の写真は,通常,左のように2消点パースの構図で撮影するのがいいのですが,しかし,実際にシャルトル大聖堂やヴェッキオ宮殿の写真を撮る場合,実は,2消点のパースの構図で写真を撮るのは容易ではありません。プロ用のカメラ(シフトレンズ)を使えばパースをコントロールすることができますが,一般のカメラで大きな建物を撮影する場合には,レンズを上に向けなけなければ建物の全体が画面に収まらないことが多く,建物の全体を画面に収めるためにはレンズを上に向けなければならず,すると,構図は2消点にならないことになります。シャルトル大聖堂もヴェッキオ宮殿も100メートル前後の高さのある建物です。こういった建物を2消点パースの構図で撮影することは簡単ではないのです。

トリミング

さて,「トリミング」について学びましょう。

図7は,はシャルトル大聖堂を遠くから眺めた写真です。この写真は,かなり離れた場所からシャルトル大聖堂を撮影したものです。カメラを垂直に構えていますから,大聖堂が2消点パースの構図で写っています。

図7 シャルトル大聖堂(トリミング前)

 

この写真は,大聖堂を写しているんだか,手前の花壇らしきものを写しているんだか,テーマが意味不明な写真です。大聖堂をクローズアップすれば,大聖堂を写そうというテーマがはっきりするかもしれません。というわけで,大聖堂をクローズアップしましょう。

ツール[切り抜き]を使って,大聖堂を矩形で囲んでください。必要に応じて,ツールボックスのオプションを選びましょう。たとえば,「縦横比」の「値を固定」すれば,矩形のプロポーションを固定できます(一般的なデジカメの画像のプロポーションは4:3です)。矩形の大きさを決めて,矩形の内部をクリックすると,矩形部分が全体から切り取られます。

このように,全体から中心となる部分を切り取ることをトリミングといいます。トリミングをするだけで,写真はわかりやすくなることがよくあります。でも,当然,うまくいかないこともあります。サンプルの大聖堂の写真は手前の建物が意味不明なので,トリミングしてもやっぱり意味不明ですね。いずれにしても,写真を人に見せる時は,そのまま見せる前に,まずはトリミングしなくていいかどうかを検討しましょう。

 


図8 シャルトル大聖堂(トリミング)

スタンプ(レタッチその2)

次に,写真に写ってしまう邪魔なモノを除去しましょう。図9と図10を比較してみてください。図10は図9からフェンスを除去した画像です。邪魔なモノを除去するのに使えるツールは[スタンプ]です。

図9 黒姫高原(スタンプ前)

 

図10 黒姫高原(スタンプ後)

 

もう一つの例を図11図12に示します。

図11の写真は,かなり以前にスペインのグラナダにあるアルハンブラ宮殿に行ったときに撮った写真です。当時はデジカメのない時代でしたから,重い一眼レフのフィルムカメラで撮影しています。この写真は,フィルムをスキャンして画像化したものです。


図11 アルハンブラ宮殿(修正前)

 

図12 アルハンブラ宮殿(修正後)

アルハンブラ宮殿は,貴重な歴史的建築ですが,それ故に大人気の観光スポットです。建築写真は,建築の写真を撮りたいわけですから,観光客に写って欲しくはありません。しかし,実際には,どうしても人が写ってしまいます。図11だって,精一杯粘って,人がもっとも少ない瞬間を狙って撮ったものです。それでも,人が写ってしまっています。写ってしまった邪魔な人には画像処理でどいてもらいましょう。

それから,色も少しあせていますから,調整しましょう。メニュー[色]>[トーンカーブ]で,画像の明るさが調整できます。また,メニュー[色]>[自動調整]>[色強調]なども使ってみてください。

なお,周囲に余白があるのが気になると思いますが,トリミングをする前に,次の「ひずみ補正」をしましょう。図12は,「ひずみ補正+トリミング」を施した画像です。

ひずみ補正

図11には,まだまだ気になる点があります。写真の構図がやや傾いていて,壁と屋根が垂直・水平に見えない点,また,屋根がむくんでしまっている点も気になります。レンズにはひずみがあります。そのひずみによって,周辺が歪んでしまいます。プロ用の高級なレンズではほとんどひずみがなかったりしますが,当時の僕の安物(安物というわけでもなかったと思いますが,プロ用というわけではありません)のカメラではそうはいきません。

まずは写真を少し回転させましょう。ツール[回転]で角度を入力すれば回転できます。そして,周辺のゆがみを補正しましょう。ゆがみは,メニュー[フィルタ]>[変形]>[レンズ補正]から操作できます。

パースコントロール

次に,透視図の消点(パース効果)をコントロールして,3消点パースを2消点に変形してみましょう。前述のヴェッキオ宮殿を修正した例を図13〜14に示します。

以下の手順で画像を変形しましょう。

  1. メニュー[表示]>[グリッドを表示]
  2. メニュー[画像]>[グリッドの設定]
  3. ツール[遠近法]

下手に操作すると,嘘っぽくなってしまいますから,建物のプロポーション(幅と高さの関係)を意識しながら,慎重に変形しください。

図13 遠近法

 

図14 ヴェッキオ宮殿(修正後)

 

夜景

イスタンブールのブルーモスクの夜景を画像処理で修正した例を図15〜16に示します。

図15 ブルーモスク(修正前)

 

図16 ブルーモスク(修正後)

 

背景の合成

Gimpを用いて,背景と建築のCGを合成してみましょう。ここでは,合成写真には建物の影を描くようにします。

Sketch Up で箱型建築を影を付けて表現し,画像としてエクスポートします。そして,エクスポートした画像と背景となる画像を,Gimpで開きます(図17)。

図17 背景画像(モニュメントバレー)

 

建築のCGについて,建物と影の部分を二つのレイヤーに分けます。[Fizzy Select]ツールで影の部分を選択し,メニュー[編集[>[コピー]→[貼り付け]をし,ダイアログウィンドウの[フローティング選択領域]で右クリック→[新規レイヤー]を選択。これで影だけのレイヤーができます。建物のレイヤーにはまだ影が残っているのでもう一度影を選択し,メニュー[編集]>[消去]で影を消去し建物だけのレイヤーにします。

続いて背景写真と合成します。背景写真で,メニュー[選択]>[ALL]→[編集]>[コピー]とし,建築の画像に戻って,[貼り付け]→ダイアログウィンドウ[フローティング選択領域]で右クリック→[新規レイヤー]を選択。これで建物,影,背景写真の3つのレイヤーができました。レイヤーの順番を上から建物→影→背景の順に変更しましょう。

各レイヤーの明るさや色味がアンバランスなので修正します。

影のレイヤーを選択し,透明度を70%にします。背景のレイヤーを選択し,メニュー[色]>[明るさ・コントラスト]で明るさを「-30」コントラストを「-20」に設定。建物のレイヤーを選択→[Fizzy Select]ツールで建物の壁面を選択。メニュー「色」>「カーブ」で上に凸のカーブに修正。メニュー「色」>「カラーバランス」でシアン-赤「+10」,黄-青「-10」に修正。ダイアログウィンドウのレイヤーで右クリック→「画像の統合」を選択し,3つのレイヤーを一つにまとめます。

最後に,メニュー[色]>[レベル]>[自動]で全体を明るくしましょう。

図18 背景との合成