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住吉の長屋のモデリング

「建築のしくみ —住吉の長屋/サヴォワ邸/ファンズワース邸/白の家」(丸善)より

 


住吉の長屋の鉄筋コンクリート部分を,以下の方法でモデリングしてみます。

  1. 基礎,壁,スラブ,その他の部分は,その形状をできるだけ正 確にモデリングする。
  2. 開口部は穴として,単純化にモデリングする。

図1に住吉の長屋の平面図,図2に断面図を示します。

図1 平面図

図2 断面図

 

鉄筋コンクリート部品の作図

建築の部位を表すCGの部品は,ほとんどの場合,厚みのある平面形状であるか,あるいは,奥行きのあ る断面形状(立面形状)であるかのどちらかです。複雑な3次元形態の建築もありますが,住吉の長屋の部位は,すべて, 厚みのある平面形状,または,奥行きのある断面形状です。したがって,住吉の長屋は,平面図あるいは断面図で部位の形状を描き,その形状に,高さあるいは奥行きを与えれることでモデリングで きます。

まずは,鉄筋コンクリート部分を部位ごとにモデリングしましょう。

断面に形状が表れる部位

図3は,断面に形状が表れる部位を示しています。ここでは以下の部位の形状が表れています。

  1. 耐圧板
  2. 基礎
  3. 1階床スラブ
  4. 1階壁(ボイラー室部分)
  5. 階段(階段の袖壁を含む)
  6. 2階床スラブ(居間の上部はスラブ下のハンチのみ)
  7. 屋上スラブの立ち上がり

図3 断面形状その1(階段を含む長手方向断面図)

 

図4は,短手方向の断面に形状が表れる部位を示しています。ここでは 以下の部位の形状が表れています。

  1. 基礎
  2. 1階床スラブのハンチ
  3. 1階壁(玄関,居間,ダイニング,浴室)
  4. 2階ブリッジ

なお,ここで,すでに図3に示した部位は,図4には表していません。図3に 表れた形状は図3に基づいてモデリングをすれば十分だからです。

図4 断面形状その2(短手方向)

 

図5は,外壁と1階の室内壁の平面形状を示しています。1階も2階も外壁の形状は同じです。

住吉の長屋の1階外壁は基礎と一体化して打設されます。しかし,ここでは,基礎と1階の外壁は別の部品としてモデリングすることとします。外壁には,後ほど,コンクリート打ち放しのテクスチャーを与えた いことに加えて,基礎は複雑な形状をしているので,外壁と基礎は別々の部品に分けた方が効率的です。

また,西側の外壁には玄関に入るための開口部があります。この開口部は,後ほどモデリングします。

図5 外壁(平面図)

 

図6には,2階の床スラブと室内の壁の部品を平面図で表しています。ここには以下の部位の形状が表れ ています。

  1. 2階床スラブ(居間の上部のスラブ)
  2. 2階寝室の壁(玄関上部吹抜の壁)
  3. 2部屋の2階寝室の中庭側の立ち上がり(建具の下部)

図6 2階(平面図)

 

図7は,屋上スラブと屋上に立ち上がる部品を平面図で表しています。ここには以下の部位の形状が表れ ています。西側の屋上スラブには玄関上部のトップライトの穴,東側の屋上スラブには屋上に出るための ハッチの開口が空いています。

  1. 屋上スラブ
  2. 屋上スラブからの立ち上がり(玄関上部のパラペット)

図7 R階(平面図)

 

図3〜図7に描かれた部品に高さ,あるいは奥行きを与えれば,鉄筋コンクリートの3次元形状がモデリ ングできます。ただし,開口部や打継目地などは,後から,ブーリアン演算によってモデリングすることに なります(ここでは,打継目地は,モデリングではなく,テクスチャーによって表現することにしていま す)。

 

耐圧板と基礎のモデリング

はじめに,階段を含む長手方向断面図に断面形状が表れる耐圧板と基礎をモデリングします。

図8は,図3(長手方向)と図4(短手方向)に表れた耐圧板と基礎の断面形状を3D空間上に配置したものです。耐圧板と基礎の立体形状は,この断面形状に奥行を与えることで作成できます。

図8 耐圧板と基礎と断面形状

 

耐圧板

耐圧板の奥行は3450ミリです(図9)。

図9 耐圧板

 

基礎

耐圧板と同様,長手方向に断面形状が表れる基礎の奥行は3450ミリです(図10)。

図10 基礎(長手方向)

 

短手方向に断面形状が表れる基礎の奥行は14,250ミリです(図11)。

図11 基礎

 

図12では,余分な線を消しています。

図12 耐圧板+基礎


1階床スラブのモデリング

1階床スラブのモデリングやちょいとやっかいです。1階床スラブの上面には部屋ごとに段差がつけられ ているからです。床仕上げの高さ(スラブ上面ではなくその上に仕上がる床面の高さ)は,玄関ポーチはGL+150,居間とダイニングはGL+300,中庭はGL+275,浴室はGL+250,ボイラー室はGL+100です。 スラブにも,この床仕上げに合わせて,段差がつけられています。


図13 1階床スラブ

 

また,床スラブの下部にはハンチがつい ています。 図14は,長手方向に断面形状が表れるスラブの立体形状を示しています。

図14 1階床スラブ(長手方向)

 

図3(断面形状その1)および図4(断面形状その2)に表れる1階スラブの断面形状を図15に示します。この形状から,スラブの立体形状を作成しましょう。平面上の寸法を図16に示します。

図15 1階スラブの断面形状

図16 1階床スラブ伏図

 

短手方向に断面形状が表れるスラブ下のハンチからは,図15に示したように,スラブ下部のハンチ部分のみをモデリングすれば十分です。このスラブ下部のハンチは,ボイラー室下部においては,上面が他の部分より下がっています。ハンチの上面を居間/ダイニングのスラブの下面に 接する高さでモデリングすると,中庭や浴室ではハンチの上面がスラブにめり込むことになりますが,これはOKとしましょう。

図17 1階床スラブのモデリング


室内の壁と階段(1階)のモデリング

1階室内壁

次に1階の壁をモデリングします。図18が1階の外壁と室内壁の平面形状を示しています。

図18 1階の外壁と室内壁の平面形状

 

さて,ここでモデリングするのは室内の壁のみとし,外壁のモデリングは後回しにします。先に外壁をつくってしまうと室内が見えなくなってしまうからです(図19)。

ボイラー室の壁以外の1階の壁は,1階の床からH=2300ミリまたはH=2080ミリの高さまで立ち上がっています。1階の床の高さはGL+250ミリです。平面形状を描いた下絵を250ミリ上方に移動して,図18に示した高さで立ち上げます。

ボイラー室の壁は上下に分けて立ち上げましょう。下部の壁はGL+70ミリからH=860,上部の壁の高さはH=480ミリで,上面がサイドの壁と一致します。

図19 1階の室内壁

 

階段

図20 階段

 

階段は,図20のようになっています。

この階段は,図21に示した断面形状に奥行をつければモデリングできます。奥行の寸法については,図1(2階平面図)を参照してください。図21の断面形状を赤で示している部位は,床スラブを補強する構造体だと思います。

図21 階段の断面形状

 

2階床スラブのモデリング

図22 2階床スラブ

 

2階床スラブは,図22のようになります。寝室A,寝室B,ブリッジ,踊場の4つの部品からモデリングできますが,寝室Aのスラブには玄関の上の吹抜となる穴が空いています。また,寝室Aと寝室Bのスラブの下部の中庭側にはハンチが付いています。

寝室B,ブリッジ,踊場は,断面形状に奥行を与えればOKですが,寝室Aには穴とハンチがあるので,単一の断面形状から作成することはできません。そこで,穴の空いた平面形状とハンチの断面形状を組み合わせてモデリングをしましょう。それぞれの部品の奥行または厚さの寸法を,図23に示します。

図23 2階スラブの寸法

 

ここで,SketchUp を使ったモデリングの方法を解説します。

下絵は,SketchUp でがんばって描くか,あるいは,CADで描いた図形をDXF形式で SketchUp に受け渡すことになると思います。なお,現在の SketchUp は 有償の PRO 版でないと DXF形式の読み込みができないようです(フリーで使えるプラグインがあるかもしれません)。

まずは,下絵を部品の表面にあたる位置まで動かしましょう(図24)。ここで,SketchUp のテクニックとしては,各部品をグループ化しておくといいようです。SketchUP は,重なったり接したりする図形を自動的に合成してしまうのですが,グループ化された図形は合成されません。

ブリッジ(デッキ)の下絵は4850ミリ,移動します。寝室Aのハンチ,踊場,寝室Bは150ミリ,内側に移動します。寝室Aの平面形状は上方に2700ミリ,移動します。

図24 下絵の移動

 

次に,各下絵に,ツール[プッシュプル]を使って,奥行または高さ(厚み)を与えます。

ブリッジ(デッキ)の奥行は4550ミリ。寝室Aのハンチ,踊場,寝室Bの奥行は3150ミリ。寝室Aのスラブは下方に150ミリ,[プッシュプル]します(図25)。グループ化した部品は[分解]してグループを解除しない[プッシュプル]できません。

なお,[プッシュプル]した後に,再度,各部品をグループ化するのが SketchUp のコツです。もちろん,思った通りにモデリングできればグループ化は解除しても構いません。

図25 プッシュプル

 

2階壁のモデリング

同様に,図26に高さを示した2階壁をモデリングします。

図26 2階壁(平面形状)

 

図27は,ブリッジ(デッキ)の手すりは断面形状で,他の部位は平面形状で描いた下絵です。この下絵に,図26で示した高さ,または,奥行を与えることになります。

図27 2階壁の下絵

 

図28 2階壁までのモデリング

 

R階のモデリング

寝室Aと寝室BのR階のスラブと寝室Aの上部の吹抜のパラペットは,図29に示した平面形状からモデリングできます。

スラブ上部の立ち上がりは,図3(断面形状その1)に示した断面形状からモデリングしましょう。特に,寝室Bの上部の点検口には傾斜がついているので,平面形状からは作成できません。

図29 R階の平面形状

 

図30 R階のモデリング


図31 R階

 

外壁のモデリング

最後に,外壁をモデリングします(図32)。

この外壁は,図33に示した下絵から作成しています。なお,実際の建築では,開口部(窓とドア)のRC(鉄筋コンクリート)は,複雑な形状に打設されます。でも,このモデルでは,開口部の詳細は簡略化しています。

図32 外壁

 

図33 外壁の下絵

 

モデリングの完成

図34は,SketchUp の断面カット表現です(カットされた断面の内部がスカスカで見栄えが悪いので,この点は要修正です)。 内部の構成がよくわかると思います。

図34 断面カットモデル