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グラスホッパー(球泉洞森林館)

球泉洞森林館

グラスホッパー

ライノスロス(Rhinoceros,3Dモデリングソフト)のプラグインであるグラスホッパー(Grasshopper)を使って,「球泉洞森林館」をモデリングしてみましょう。

グラスホッパーは数値を使ってモデリングを行うツールですが,グラスホッパーによって形態を生成する方法は,Shadeのスクリプト(python)などのコードを書く方法と大きく異なり,コンポーネントと呼ばれる部品をビジュアルに組み合わせていく独特の方法を使います。コードを書くのが苦手な人にはオススメのツールです。

グラスホッパー自体はフリー(無料)で,以下のサイトから入手できます。

Grasshopper: ALGORITHMIC MODELING FOR RHINO
http://www.grasshopper3d.com/

しかし,グラスホッパーを動かすのにはライノスロス(有償)が必要です。

 

球泉洞森林館

「球泉洞森林館(森林館エジソンミュージアム)」は熊本県球磨郡球磨村にある博物館で,1984年に建てられました。設計者は木島安史さん(1937-1992年)です(上段の写真)。2012年の豪雨で浸水があり,2014年現在,閉館されています。

7つのドームが特徴的な建築で,ドームの直径は15メートル(半径7.5メートル)です。敷地が急な傾斜地であることもあり,複雑な形態に見えますが,おおまかな形態としては,7本のシリンダー(円柱)の上にドーム(半球)が載っています。でも,シリンダーの高さは均一ではありません。また,柱によって持ち上がっているシリンダーがあります(図1)。

図1 球泉洞森林館

 

実際には複雑な形態ですが,ここでは,柱の立つ部分を省略して,図2のような単純化モデルを作成しましょう。

図2 球泉洞森林館(単純化モデル)

 

単純化モデルの平面図を図3に示します。ここで,(0,0)は3Dモデルの原点,他の座標は7つのシリンダーおよびドームの中心のXY平面座標を示しています。また,「7〜13m」の数値は,シリンダーの高さを表しています。

図3 球泉洞森林館(単純化モデル)の平面図

 

ライノスロスによるモデリング

ライノスロスは3Dモデリングソフトです。NURBSという方法でモデリングをする特徴があり,なめらかな曲面などを得意とするソフトです。

ライノスロス
http://www.rhino3d.co.jp/

グラスホッパーを使う前に,まずは,グラスホッパーを使わないで,ライノスロスそのものを使って,球泉洞森林館の単純化モデルを作成してみましょう。

 

起動

ライノスロスを起動すると,図4のような画面が開きます。テンプレートとしては,建築向けの「Large Objects - Millimeters.3dm」を選択してください。

図4 ライノスロスの起動画面

 

Top(平面図),Front(正面図),Right(側面図),Perspective(透視図)の4画面が表れます。ここで,4画面のうちの1つがアクティブ(操作対象)な画面です。いずれかの画面をクリックするとその画面がアクティブになりますが,画面をアクティブにする時は,左クリックではなく,右クリックをオススメします(左クリックをすると無意識に何らかの操作を行ってしまうことがあるため)。

「Top,Front,Right,Perspective」のタイトル部分をクリックすると,4画面から1画面に切り替わります。

マウスのホイールボタンを回すと,画面がズーム(拡大縮小)します。「Perspective」以外の「Top,Front,Right」上でマウスを左ボタンをプレスしながら動かすとパン(画面移動)します。「Perspective」では,左ボタンのプレスは視点を動かします。

画面の上方にパネルがあり,コマンドのアイコンの表示を切り替えられるようになっています。図4では,「ビューの設定」が選ばれていて,図5のアイコンが表示されています。

図5 ビューの設定

 

一番左の「手のひら」がパン,その右が視点の回転,その右からいくつかはズームに関係するアイコンです。左から4つめが,図形を画面にフィットさせるズームさせる便利なコマンドです。図5の中央あたりに車のアイコンが並んでいますが,これは「Top,Front,Right,Perspective」などを切り替えるコマンドです。

画面の下部には,座標の表示やスナップなどの設定を行うためのステータスバーが表示されています(図6)。「グリッドスナップ」をONにすると,マウスのポイントがグリッドの交点に規制されます。「Osnap」をONにして,「端点,近接点,点,…」などにチェックを入れると,チェックしたポイントがスナップされます。

図6 ステータスバー

 

グリッドの設定

さて,モデリングを始める前に,グリッドの設定をしましょう。

メニュー[ツール]>[オプション..]を選択すると図7のダイアログが表れます。

図7 オプション

 

[グリッド]を選択して,以下の数値を変更してください。

  • グリッドのプロパティ
    • グリッド線数:【400】
    • 細グリッド間隔:【100】(ミリメートル)
  • グリッドスナップ
    • スナップ間隔:【500】ミリメートル

シリンダーの作成

シリンダーを作成しましょう。

ステータスバーの「グリッドスナップ」をONにして,ツール[ソリッド作成]>[シリンダー]を選択し,原点[0,0]を中心とする半径7500,高さ10000の円柱を作成しましょう(図8)。

図8 シリンダーの作成

 

次に,ツール[変形]>[コピー]を選択し,作成済のシリンダーを移動しながらコピーします(図9と図10)。ここで,「Osnap」をうまく使って,シリンダーの「中心点」を「端点」や「交点」などにスナップさせながら移動+コピーをしましょう。Top(平面図)ではなく,Front(正面図)で作業をするといいかなと思います。

図9 シリンダーのコピー(平面図)

 

図10 シリンダーのコピー(透視図)

 

図9と図10では,コピー+移動の過程で,余分なシリンダーをコピーしてしまっています。図10で選択しているシリンダーは余分ですから,削除しましょう。

 

高さの修正

コピー元の最初に作成したシリンダーの高さは10メートルだったと思います。それをコピーしたので,今は7つのシリンダーの高さがすべて10メートルになってしまっています。シリンダーの高さは,3つが10メートル,中央の2つが13メートル,両端の2つが7メートルです。

中央の2つのシリンダーの高さを,13メートルに変更しましょう。ツール[変形]>[スケール]>[1方向]で,変形するオブジェクトを選択し,高さ方向に引っ張ってください(図11と図12)。

図11 高さの修正(透視図)

 

図12 高さの修正(正面図)

 

同様に,両端の2つのシリンダーの高さを7000に修正しましょう(図13)。

図13 高さの修正

 

ドームの作成

次に,半径7500のドーム(半球)を作成しましょう。

画面の空いている場所に,半径と高さが7500よりも大きなシリンダーを作成してください(7500ピッタリではなく,より大きなシリンダーとしてください)。そして,そのシリンダーの上面の中央を中心点として,半径7500の球を作成してください(図14)。


図14 球の作成

 

ここで,ブーリアン演算(カタチの足し算や引き算)を用いて,球から下部のシリンダーを引き算して,ドーム(半球)を作成しましょう。ツール[ソリッドツール]>[ブール演算:引き算]で,元オブジェクトに球,引き算するオブジェクトにシリンダーを選択すると,ドームが作成されます(図15)。

図15 ブーリアン演算

 

作成されたドームをコピー+移動して,7つのシリンダーの上に載せましょう(図16)。

図16 ドームのコピー

 

これで,「球泉洞森林館」の単純モデルの出来上がりです(図17)。

図17 完成

 

グラスホッパーによるモデリング

さて,今度は,同じことをグラスホッパーを使ってやってみましょう。まったく同じモデルを作成していきますが,作成し終わった後に,グラスホッパーの威力(利点)が確認できると思います。

 

グラスホッパーの起動

グラスホッパーは,コマンドラインから「Grasshopper」と打ち込むことで起動します(図18)。

図18 グラスホッパーの起動

 

グラスホッパーが起動すると,ライノスロスの画面の上に,グラスホッパーの画面が重なって表れます(図19)。

図19 グラスホッパーの画面

 

グラスホッパーの画面上に,形態を記述するコンポーネントを配置すると,ライノスロス上に形態が表示されます(図20)。

図20 グラスホッパーとライノスロス

 

3Dポイントの作成

最初に,ドームの中心ともなるシリンダーの上面の中心点を記述しましょう。

形態を記述するためのコンポーネントは,「Params, Maths, Sets, ..」などのパネルによって分類されています。3Dポイント(空間上の点)を記述するためのコンポーネント[Construct Point]は,パネル[Vector]の中にあります。コンポーネント[Construct Point]をマウスでつかんで(左ボタンをプレスして),編集画面(コンポーネントを配置するスペース)に引っ張っていってください(図21)。

図21 Construct Point

 

[Construct Point]で記述された3Dポイントはまだ座標を持っていません。そこで,この点にX, Y, Zの3つの座標を与えましょう。座標として,直接に数値を指定することもできるのですが,ここでは,スライダーを使います。パネル[Params]の中にあるコンポーネント[Number Slider]を引っ張って,編集画面の[Construct Point]の左方に配してください(図22)。

図22 Number Slider

 

スライダーの「Slider」と書かれた部分をダブルクリックすると,図23に示したダイアログが開きます。

図23 Number Slider の設定

 

このダイアログを使って,スライダーの設定を行います。以下のように設定をしましょう。

  • Name: 【X】
  • Min: 【-20000】
  • Max:【20000】
  • Numeric value: 【0】

このスライダーによって,「0」の値をもつX座標を記述しました。座標としては,YとZも必要ですから,このスライダーを2回コピー(編集からコピー&ペースト)して,YとZの座標としましょう。YとZのスライダーは,設定で,[Name]を「YまたはZ」に変更してください。また,X, Y, Z の3つのスライダーの右端の突起を,3Dポイントの左端の[X/Y/Z]の3つの突起と結んでください。突起の上で マウスをプレスして他の突起まで引っ張ると,突起同士が結ばれます(図24)。

図24 3Dポイントの座標の記述

 

ここまでできたら,Zのスライダーの数値「0.000」をダブルクリックして,「0」を「10000」に変更してください。この操作で,ライノスロス上に表示されている点が上方に「10000」,移動することがわかると思います(図25)。

図25 3Dポイントの移動

 

また,マウスを使って,スライダーの数値を左右に移動すると,その値に連動して,ライノスロス上の点が動くことがわかると思います。こんな風に,形態を後からインタラクティブに操作できるのがグラスホッパーの威力だと思います。

 

シリンダーとドーム

次に,シリンダーとドームを記述しましょう。

シリンダーとドームを記述するためには,基準平面(基準となる平面)が必要です。パネル[Vector]のコンポーネント[Construct Plane]を3Dポイントの右方に置いてください。そして,3Dポイントの右側の突起と基準平面の左側の[O]の突起を結んでください。これで,3Dポイントの位置を中心とするXY平面(水平面)が記述されます(図26)。

図26 基準平面の作成

 

次に,パネル[Surface]から,シリンダーを記述するためのコンポーネント[Cylinder]を選択し,配置します(図27)。

図27 コンポーネント[Cylinder]の配置

 

同様に,パネル[Surface]から,球を記述するためのコンポーネント[Sphere]を選択し,配置します(図28)。

図28 コンポーネント[Sphere]の配置

 

シリンダーと球は,指定した基準平面上に作成されますが,シリンダーには高さと半径を,球には半径を指定する必要があります。ここで,シリンダーと球の半径は共通です。そこで,高さと半径を指定するスライダーを追加しましょう。シリンダーの高さには「-10000(基準平面から下方に10メートル」,半径には「7500」を指定してください。そして,各コンポーネントの突起を図29のように結んでください。

図29 シリンダー+球

 

ここで,もう一つ,コンポーネントを加えましょう。パネル[Intersect]からコンポーネント[Solid Union]を引っ張り出して,シリンダと球と結んでください。Shiftキーを押しながら突起を結ぶと,一つの突起を複数の突起と結ぶことができます(一つの突起を複数の突起と結ぶことが可能な場合)(図30)。この操作によって,シリンダと球が一つの形態としてグループ化されます。

図30 Solid Union

 

コンポーネントのコピー

これで一つの「シリンダー+球」ができあがりました。この「シリンダー+球」をコピーして,隣接する「シリンダー+球」を作成しましょう。一つの「シリンダー+球」を記述するコンポーネントを一括選択して,コピー&ペーストし,3Dポイントの位置と,シリンダーの高さを変更しましょう(図31)。

図31 コンポーネントのコピー

 

これを繰り返せば,球泉洞森林館の全体が表れます(図32)。

図32 コンポーネントのコピー(全体)

 

グラスホッパーからライノスロスへ

これで,球泉洞森林館の単純化モデルのグラスホッパー版ができあがりました。スライダーを動かせば,ライノスロス上の形態が変化するのがおもしろいと思います。コンポーネントをもっとうまく配置したり,新たなコンポーネントを加えることで,よりおもしろく変化するモデルが作成できると思いますので,チャレンジしてみてください。

なお,グラスホッパー上の形態を記述するコンポーネントを選択すると,ライノスロス上では,その形態が緑色で表示されます。

さて,グラスホッパーのコンポーネントはライノスロス上に形態を表示しますが,これは形態を単に表示をしているだけで,ライノスロス上に形態が作成されるわけではありません。試しにグラスホッパーを閉じれば,ライノスロス上に表示された形態はなくなってしまいます(グラスホッパーを閉じる前に,データの保存を忘れないように)。

グラスホッパーで記述した形態をライノスロスにもっていく(ライノスロス上に作成する)ためには,「Bake(焼き付け)」という操作をします。グラスホッパー上の形態を選択して,右クリックで表れるメニューの中にある[Bake..]を選択してください(図33)。[Bake..]は,オブジェクトごとに行わなければなりませんので,ここでは,7つの「シリンダー+球」をそれぞれに[Bake..]することになります。コンポーネントの構成を工夫すれば,[Bake..]の回数を減らせますので,工夫をしてみてください。

図33 形態のBake(グラスホッパーからライノスロスへ)